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It's Not About the Bike
『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』 ランス・アームストロング
癌を克服し、後にツールドフランスで7連覇を成し遂げたランス・アームストロングの自伝。癌はすでに脳や肺など全身に転移しており、自転車生命はおろか、命そのものもかなり危うい状況からの奇跡的なカムバック。それから再びトレーニングに励み、ツールを優勝するまでの軌跡。簡単に言えばこんな感じだが、もちろんそんな簡単に言える話ではない。
読み物としては非常に面白かった。ランスのマザコンぶり(別に本人が言ってるわけじゃないけど)にガチで引いてしまう面も幾度かあったが、この強烈な母子愛なくして彼の活躍は無かったと思えば、それも受け入れざるを得ないだろう。高ケイデンスの走りに耐えうる身体能力と心肺機能も、彼が生まれ持った類稀なる資質と生活環境を思えば容易に納得できた。また、凄まじい精神力の持ち主かと思いきや、非常に繊細で脆く、時に激しい一面も併せ持っており、共感できる部分が少なからずあったのは意外だった。
闘病についてはもちろん凄いことなのだが・・・。ん~。ちょっとあの辺りは邪念を持ちながら読んでしまったかな。というのも、癌が発病したのはランスが自転車競技者としてある程度有名になった後だから自然な流れにも思えるが、医療行為を受ける上では環境的にも非常に恵まれてるな~と思ってしまったんだよね。ストレートに言うと、これ、ランスが一般ピープルだったら・・・助かったのかな?と。どれだけ病気に立ち向かう強い精神と肉体を持っていても、最先端の医療を受けなければ癌との戦いはもちろん、競技者としての人生は違った結果になったはずである。そう思うと何だかセレブの闘病記を読んでいる気分になってしまった。もちろんそれが良いとか悪いとかって話じゃなくてね。
医者選びってのはホント重要だよね。大病になればなるほど。もちろんある程度は運の要素もあるけれど、目の前に現れた医者にハナから全てを託すのは非常にナンセンスで危険な話。同じ病院、同じ診療科でも医者のスキルの差は凄いからね。口ばっかり達者な医者もいれば、口数は少なくても確かな技術と知識を持つ医者もいる。性根の腐った医者もいれば、常に患者中心で物事を考える尊敬すべき医者もいる。病気を治せる医者と、予後を悪くする医者。オレの職場でも「あ、この患者さん可哀想だな。この医者じゃダメだよ。」ってのは全然珍しくない話。
んーと。。。話は脱線しちゃったけど、とにかく奇跡と努力と絆が作り上げたこの作品。何事にも諦めずに立ち向かう根性が必要だと教えてくれます。ランスファンはもちろん、ツールのファンも必見の一冊でしょうね。☆4つでございます。
2012/04/28 (Sat.) 読み物